虐待を受けるのは、小さな子どもだけではありません。
10代後半、あるいは20代になっても、家族の無理解や無視、暴力が原因で、
家庭で安心して生活できない若者たちがいます。
生きづらさを抱えながら、頼れる大人もなく、ひとりで悩んでいる若者たちがいます。
こうした若者たちは、遠い国のどこかで暮らしているわけではありません。
わたしたちが生きるこの社会のどこかで、今日を生きています。
しかし、そのSOSは、大人には届いていません。
若者を社会につなぐ仕組み、若者が安心できる居場所が、いま求められています。
そだちの樹には、弁護士や社会福祉士など、若者の力になりたいという強い想いを持った専門家が集まっています。「聞く。会う。動く。社会につなぐ。」をモットーに、若者の声に耳を傾け、気持ちに寄り添い、解決に向けて動いています。
わたしたちだけで解決できないことは、信頼できる機関と一緒に。手助けがいらなくなる時まで、しっかりかかわります。
若者が生き生きと暮らしていくためには、安心できる居場所が必要です。わたしたちは、自分からSOSを発信できない若者に会いに行くアウトリーチ型のケースワークを展開する一方で、ふらっと立ち寄れる居場所、危険から身を守ってくれる居場所をつくって、若者たちを待っています。
そだちの樹の相談窓口「ここライン」には、10代後半から20代前半の若者を中心に、年間70件ほどの相談が寄せられています。そのうち60%以上が、悩みを抱えている本人からの相談。誰にも相談できない。誰にも分かってもらえない。そんな声から、わたしたちは見えないニーズを読み取っています。
そだちの樹には、児童相談所、家庭児童相談室、女性相談所、警察などの行政機関や、民間の相談機関からも多くの相談が寄せられます。子ども向けの制度にも、大人向けの制度にもなじみにくい若者世代の課題は、経験豊富な相談機関のスタッフも悩ませます。
もちろん、相談を受けるだけではありません。多くの関係機関と手を携えて、悩ましい課題に取り組んでいます。
フリースペースとして開放しているそだちの樹の事務所には、多くの若者が訪ねてきます。これまで利用した若者は延べ100人以上(2016年12月現在)。スタッフに相談する人、パソコンで仕事探しをする人、おなかが空いた人、なんとなく寄ったという人。立ち寄る理由はさまざまです。
毎月開催している無料の食事会「ここ食堂」も好評です。大人も子ども若者も、年齢や立場にとらわれず、みんなでごはんを囲んでいます。
そだちの樹は、さまざまな理由で社会に居場所を失った子どもたち、若者たちが、ひとりじゃないと思える未来を目指しています。誰にも届かなかったSOSを拾い、社会とつなぎ、居場所をつくる。入り口から出口まで継続的にかかわる仕組みを用意して、わたしたちは、目指す未来を実現したいと考えています。
しかし、わたしたちのビジョンは、わたしたちの力だけでは実現できません。子どもたち、若者たちをつないでくれる誰かがいなければ、わたしたちがサービスを提供することはできません。彼らを社会の一員として受け止めてくれる誰かがいなければ、未来を保障することはできません。
だから子どもたちを、わたしたちにつないでください。若者たちを、社会の一員として受け止めてください。この社会で生きるすべての人と、わたしたちは、わたしたちが目指す未来を実現したいと思っています。